はなれていても(青木絵美)
先日、大阪の高校生からお話を聞く機会があった。大阪府立堺工科高校定時制に通う3年生の男子生徒さん。学校のホームページを見るまで全く知らなかったのだが、東日本大震災後、何度も石巻を訪れている高校だった。目的はもちろん被災地支援。大阪の高校の先生から、東日本大震災を風化させてはならないという言葉が出てきたのも印象的だった。 堺工科高校定時制には、堺学という地元の伝統産業を学ぶ授業がある。電話をしたその日も、堺の伝統工芸品である「とんぼ玉」づくりの最中だった。地元の素晴らしい職人さんが丁寧に指導してくれるそうで、高校生たちの覚えも早いのだと先生は話していた。それでもかなり難しいようで、だいぶ苦戦する様子を教えてくれた。たったひとつのとんぼ玉を作るのに、15分もの間、ガラスを回転させて続けなければならない上に、きれいな球体にするのは本当に難しいらしい。それでも、震災によって傷ついた人の心をちょっとでも癒やしたい、ちょっとでも喜んでもらいたいと、一生懸命制作に取り組んでいる様子が声からも伝わってきた。 定時制高校なので、生徒さんたちは働きながら学校に通っている人がほとんどだという。お話を聞いたうちの一人は、朝から仕事をして昼に学校、夜は別のアルバイトをしていると言っていた。「(体調が)たまにやばいかなという時がある」と聞き、若いからってあんまり無理しないで!と出かけた言葉をそっと胸にしまった。 彼らはこれも堺の伝統産業である「包丁」を送る支援も行っている。さらには、送りっ放しにするのではなく、毎年研ぎ直しに来ているというから驚いた。本当に心から、石巻に、宮城に、東北に思いを寄せているのだ。 このインタビューの模様は、明日18時半から放送される「石巻市放送部高校生ラジオ」で紹介する。ぜひたくさんの皆さんに遠く離れた高校生の優しい思いを聞いてもらいたい。