番組開始9年目(SAAA)
例年、この時期になると自分の番組の周年が近づいていることを知り、なぜダンスミュージックを石巻で紹介する番組を始めたのかを改めて考える機会になる。また、3・11が近づきつつある今日、この10年何が変わって何が変わらずにあるのか確認する意味でもこの季節は特別な雰囲気をまとってやってくる。 さて、僕が紹介するダンスミュージックの源流は1980年前後のディスコを起源とし、90年代初期に繁栄したハウスミュージックだ。今や30年の時がたち、新しい音楽ではなくなってしまった。ダンスミュージックに限らず、ロックやヒップホップも同様に年を重ね、初期の衝動的な勢いは薄れ、洗練された様式美にカタチを残し、昔あったはずの文化的意味合いも消えていく。 僕は2000年代後期にこのダンスミュージックにハマり、特にファッションとリンクしたNuDISCOと呼ばれるハウスのサブジャンルのとりこになり、クラブへと足しげく通うようになった。そうして過ごした2000年代が終わり10年代に入った直後に震災が起き、僕らが過ごしたクラブカルチャーはひどいダメージを受けた。僕が?代に愛を注いだこのカルチャーを復興させなくてはという思いで「自分の元いた場所から立ち上がる」をコンセプトとしたチャリティーパーティーの開催やできる限りの活動をした。その中で、もっと身近にダンスミュージックがあれば人は楽しく過ごせるのではないかと考えるようになった。プロフェッショナルなダンスじゃなくて、音楽の中で子どものように跳ね回るダンスが僕がいた場所の本当の光景だったから、それはきっとクラブやフェスじゃなくても通用すると思い、ラジオ石巻のドアをたたいた。 ちなみに、僕の番組の音楽性は全く変わらなかったが、大きく変わったこともある。僕がクラブに通う頃にはいなかった石巻の仲間がたくさん増えたことだ。 今は当時よりもSNSの発達で同じものを好きな人が見つけやすくなったが、きっとこの石巻唯一のダンスミュージック番組の功績もあるのかなと思っている。