ヒーローとは(阿部拓郎)
「@tokusatsuhero」というツイッターのアカウントをご存じだろうか。そのアカウントは3月11日、東日本大震災の際に生まれた。これまで特撮作品に出演した俳優や声優の方々が主にその登場人物として、被災した地域の子どもたちや、直接の被災はしなかったものの停電や余震におびえる地域の子どもたち、さらには特撮ヒーローを見て育った大人たちを勇気づけるためツイッターを通じてメッセージを送るためのアカウントである。 発起人は忍者戦隊カクレンジャーに「ニンジャレッド/サスケ」として出演されていた小川輝晃氏。そして、小川氏を中心にたくさんの俳優や声優の方々、さらにはスタッフの方や主題歌を担当した歌手の皆さんまでメッセージを寄せている。詳しい内容はぜひその目で確かめてほしいので、あえてメッセージ内容は挙げないが、僕はこのアカウントにとても救われたというのが今回の話。 震災当時、僕は東京にいた。大学卒業後、自分は何ができるのか分からず東京に行けば何か見えるかもしれないという、漠然とした思いで東京で生活をしていた。そんな折に震災が起きた。僕の出身の牡鹿半島は当初ニュースやインターネットでも全く情報を得られず、家族の安否も不明な中、決まらない覚悟と一緒に不安だけを募らせていた。少しでも情報がないかと、ツイッターで細かく調べていたところ偶然「@tokusatsuhero」に出合った。何とはなしにのぞいてみると、特撮に関わったたくさんの方々が、いや「ヒーロー」たちが励ましの言葉を送っていたのだ。僕が見たことのない戦隊ヒーローから、よく知っている仮面ライダー、さらには敵対していたあの悪役まで!?僕はその時に確信した。ヒーローはいる。今もどこかで戦っている。それは、物語の敵とだけじゃない。僕たちの不安や疑念、焦燥や悲しみ、そういった心を晴らすためにずっと戦い続けてくれている。今も、震災の地で人々を助けている。涙が出た。 それからだろうか、僕にとってヒーローは特別なものになった。特撮ヒーローは子ども向けの作品だからこそ「ズルはよくない」「うそをつかない」「諦めちゃいけない」。そんな「優しい大人になりなさい」という思いが込められており、ふとした時に自分を省みる。 ヒーローはいる。いてくれたのだ。