クレオパトラの夢(佐藤千代)
毎週、月曜日の午前中が私の出番である。といっても相方の及川章敬氏あっての2時間半なのだが、その中に「千代〓(←アポストロフィーが入ります)sセレクション」という私が楽曲を選んでお届けするコーナーがある。初めのうちは無我夢中であれもこれもと選んでお届けしていたのだが、何年にもわたると自分の音楽センスの乏しさを如実に知ることとなった。 何といっても私の音楽感性は昭和のものでそれ以降はメロディーと曲名が一致しなかったり、歌詞が定かでないので、今この時期にふさわしいのか判断がつかない。いきおい自分が成育する過程で聴き、心のどこかに残っている曲に偏りがちである。 毎週、その逡巡(しゅんじゅん)を繰り返してはしのぎ、先週は以前にもお届けしたことのあるテレビCMの中で使われたジャズナンバーをお届けした。 10代の頃、ジャズの何たるかも知らぬまま外国映画の中に登場する酒場のシーン、重厚なマホガニーの調度品の前で言葉もなく見詰め合う男と女、その背景にやるせなく静かに流れる音楽にドキドキしながら魅入っていたものだ。 どんなに時代が変わろうとも、さまざまにアレンジされては繰り返し世の中に登場する曲は人種を問うことなく直接、人々の魂に語り掛けるのかもしれない。 放送の後、友人からメールが届いた。すてきなジャズの世界、クレオパトラの夢、と来たらお酒飲まないとさまにならないもの、養命酒を飲んだとのこと。やっぱりワイン買っておこう、と楽しげな内容。 高齢者のコロナ対策、耳にたこが寄るほど繰り返される昨今、明日はどうなるのとおびえるよりもすてきな曲に心躍らせ、お一人様でも、もはや蜜のかけらさえ残っていないお二人様でも、本来の自分を解き放つ遊び心のお手伝いをしたい。クレオパトラ、楊貴妃、小野小町、誰の絵姿でも勝手に重ねて悦に入るべきである。この次はジェラシーかけようかな