「天気の話」(青木絵美)
7月15日にこの原稿を書いている。掲載される7月20日にはきっと梅雨も明けているはず、と思いながらも「明けましたね」なんて書く自信はない。 世間話で天気の話は定番だ。暑い寒いという何気ない会話から話は始まるものだ。ラジオの生放送でもリアルタイムの天気を伝えている。しかしこれが収録番組となるとそうはいかない。以前、月曜日に放送する番組を前週の木曜日に収録したのだが「今年は全然雪が降らないよね〜」と言っていたら土日に積もるほどの雪が降ったことがあった。どうしてくれる!とすぐさま抗議の電話をかけたが、電話したところでどうにかなるわけではない。聞いている人に気付かれないように、自然な形で、そっと「雪降らないね」のくだりをカットするしかないのだ。放送直前の差し替え。これが意外と面倒だったりする。だから天気の話はしないでって言ったのに!とはいえ、こんなことは日常茶飯事だ。 先日もシンガーソングライターの幹mikiさんが、梅雨入り前の収録で「梅雨入りしましたね」と発言した。放送は2週間以上先なのに!?すぐさま「収録しているのはまだ〇日なので本当に梅雨入りしているかは分かりませんけどね」とフォローしたつもりが「大丈夫です。梅雨入りしてますよ」とにっこり笑う幹さん。その自信はどこからくるの〜!と半信半疑の私。さてその結果は…見事、梅雨入り後の放送となった。そして先日の収録では「梅雨も明けましたね」と幹さん。もちろん梅雨明け前の時点での収録だが、私はもう慌てたりしない。収録の合間には「蜘蛛が巣を張るっていうのは、もうすぐ梅雨が明けるってことなんですよ」と教えてもらった。気象庁からの発表はあったか!とパソコンばかり見ている私には知り得ない世界。蔵王の自然の中で暮らしている幹さんだからこそ、感じ取れることなのだ。そしてふと思った。本当の梅雨明けは、気象庁の発表で決まるのではなく、そこで暮らす人が決めることなのかもしれない。