「ひとりじゃない」  (青木絵美)
「音楽はYouTube(ユーチューブ)でも聴けるけど、ラジオから流れるのはまた別でしょう」
そんな趣旨のメッセージが届いた。確かにどういうわけか、同じ曲でもラジオから流れるとなんだか格別だ。少しノイズ混じりで味があるということかもしれないが、私は別の理由があると考える。
それは「誰かと一緒に聞いている」という無意識の感覚だ。ラジオから流れるその曲は別の場所で知らない誰かも同時に聞いている。つまり誰かと共有していることになる。
コロナ禍で人と会うことさえはばかられた頃、ラジオの果たす役割はきっと大きいと私は信じていた。直接会うことはできないが、ラジオならば声でつながれる。一変してしまった「当たり前」の中でせめて私たちがいつも通りに弾んだ声を届けられれば、それは安心感につながるのではないか。そんなことを考えながら放送していた。
ニュースタンダード、新しい生活様式、withコロナ。私たちは変わることを求められたが、ラジオだけは変わらない存在でありたいと思っていた。
パーソナリティーがいて、リスナーさんがたった1人いてくれれば、もう独りじゃない。ラジオをつけてくれさえすれば、独りじゃないのだ。
この年末も寂しい気持ちを抱えたまま過ごす人がいるかもしれない。数年前になるが、私に「俺には正月なんて来ねぇ」と話してくれたおじさんは元気だろうか。このコラムを読んでいてくれたら、ぜひラジオをつけてほしい。
今年の年越しには希望の花火の打ち上げが予定されており、その模様はラジオで中継されることになっている。
ラジオをつけて、一緒に新年を迎えましょう。ラジオをつければもう、ひとりじゃない。(アナウンサー・青木絵美)